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地域の方の温かさに支えられて#地域おこし協力隊BLOG【井上佳奈】

こんにちは!
地域おこし協力隊の井上佳奈です。

四万十町には現在、約20名の協力隊員がそれぞれのミッションに基づいて活動しています。私は、四万十町の東の玄関口に位置する仁井田・影野地域で、「地域づくり」をテーマに活動しています。

四万十町との出会い
四万十町に初めて訪れたのは、今から4年ほど前のことです。その時、四万十町役場の和気あいあいとした雰囲気や、地域の方々の熱い想いに触れ、「ここなら、自然体でのびのびとしながらも、地域の方と一緒に情熱をかけて活動ができるのではないか」と思い、四万十町の協力隊になることを決意しました。

地域の方の温かさに支えられて
着任当初は、自分がやりたいことや地域で求められること、卒業後の進路とのバランスをどうとるかに悩み、誰にも本音を話せず、周囲からの反応を気にしながら、慎重に行動をしていました。
そんな時、地域の方が「井上さんがやりたいことをやってくれたら良い。それが結果的に、地域が盛り上がることに繋がればいいから」と言ってくださいました。その言葉に救われ、「まずは自分がやりたいことに挑戦してみよう」と思えるようになりました。

そして、いざ、地域で活動をしていくと、「頑張っているね」と声をかけてくださる方や、何かに困っていると全力で応援してくれる方が多くいました。
この町の方は、本当に親切で、1を聞くと10教えてくれます。さらには、できないことがあってやり方を尋ねると、数日後には「やっといたよ!」とまさかの解決済みということもよくあります。そんな場所なので、安心して相談しながら、みなさんの力を借りて、少しずつ色々なことに挑戦することができました。

様々なチャレンジを重ねて
これまでに色々なことにチャレンジをしてきました。地域の駅前で定期開催するマルシェ、親子向けのイベント、若者向けのイベント、小学生と駅前を彩るアートイベント、高齢者向けのスマホ教室、特産品を使った加工品開発、そして伝統茶の継承など。プライベートでは、特産品である仁井田米を使ったおにぎり屋さんをオープンさせました。

活動を通じて多くの方と出会い、助けてもらいながら新たなチャレンジを重ね、地域の方と少しずつ関係を深めていきました。初めは、自分の考えや思いを伝えることに不安を感じていましたが、今では、本音で語り合える仲間が増え、自分自身の経験値も増えていきました。

地域をひとつに
今年の夏、私にとってこれまでで最も大きなイベントとなる夏祭りを開催しました。地域にとっても大きなチャレンジでしたので、記録も兼ねて少し詳しく書きます。

みんなの思いが少しずつ合わさって動き出した夏祭り
地域には、地元の鉄工会社の社長さんが「子どもも大人も楽しめる場所が必要だ」と何年もかけて手作りした広大な広場がありました。しかし、一部の限られた人にしか知られておらず、私を含めた地域活動のメンバーは、この場所を使って何かできないかと数年前から漠然と考えていました。何度かその話が出てくる中で、そうした思いを持つ人が少しずつ増え、「地域の一体感を高めたい」そして「地域を出た人たちにも地域に帰ってきたいと思わせるイベントをしたい」という思いが結びつき、「夏祭り」として今年の夏、実現に向けて動き出すことになりました。

50年ぶりの盆踊りの復活
夏祭りの開催が決まり、私がどうしてもやりたかったのは、盆踊り大会です。子どもの頃、盆踊り大会の幻想的な雰囲気の中で、家族やご近所さんと一緒に楽しんだそのお祭りが、地元の大切な思い出として、今でも鮮明に記憶に残っていたからです。
地域では、約50年前に夏祭りが途絶えており、「今どき、盆踊りなんて、踊りたい人がいるんかね?」と何度も言われましたが、「みんなに踊ってもらうようにするので、絶対に楽しいからやりましょうよ!」と伝え、意見を受け入れてもらい、盆踊りを開催することになりました。

地域ならではの強み
いつもイベントなどの準備をしていると感じることですが、地域の方はとにかく行動が早い!やると決まると、各々が自然と自分の役割を見つけて、どんどん進めていきます。運営メンバーの一人が、仕事をしながら地域の企業40社からの寄付金を集め終わっていたのには、驚きました。

さらに、地域は、プロフェッショナル集団の集まりです。建築、電気、土木、鉄工、農業、林業など様々な業態の事業者さんがおり、それぞれが持つ技術や専門設備、人脈がフルに活かされていきます。都会だと、専門業者にお金を払って頼まないとできないようなことがあっという間に自前で進んでいきます。
夏祭り会場に顔を出す度に、次々と新たな設備が整えられていき、ある日、子供たちが遊べるようにと屋外に巨大なプールができていたときは、規模感が想像をはるかに超えていて、「すごいですね」という言葉しか出てこなくなりました。

そして、地域の方は色々な方を知っています。
盆踊りをしたいという話をすると、民謡を語り継いでいる方々がいることを紹介していただきました。3年以上地域にいても知らないことだらけです。盆踊りの文化が途絶えているというこの地で、地域の方々に踊ってもらうために、当日、民謡グループの方々に先導をしてもらうことになりました。また、事前に地域にある2校の小学校にも訪問し、盆踊りのレクチャー会も行いました。

事前に行った盆踊りのレクチャー会

夏祭り当日
そして迎えた夏祭り当日。数日前までしばらく雨が続くはずだった予報が、奇跡的にその日だけ晴れ予報に変わり、無事開催を迎えました。

お祭りの1か月程前から、「お客さんが来なかったらどうしよう」「出店を依頼した屋台の方々に申し訳ないことになる。」と不安でいっぱいでした。

しかし、お祭り開始と同時にどんどんお客さんが集まり、用意した駐車場はすぐに満車、気づくと、会場までの道路沿いにも車がいっぱいになり、国道にまで渋滞が発生するほどの事態になっていました。

駐車場対応に追われながらも前座のフラダンス、四万十太鼓の演舞、よさこいグループの踊りと進み、盛り上がりを心配していたカラオケ大会は、若い方の参加や、飛び入り参加者も次々と現れ、大盛り上がり。

そして、暗くなり盆踊りが始まりました。
当初の心配をよそに、曲が始まると、会場にいた老若男女が自然と輪に入り、踊り始めたのです。おばあちゃんたちは懐かしそうに、若者たちは初めて見る踊りに興味を持ち、民謡グループの方や事前に練習した子どもたちの動きを見ながら、見よう見まねで踊りを楽しんでいました。50年前に途絶えた文化が、今再びこの地域に蘇った瞬間でした。
踊る人なんていないだろうと思っていた運営メンバーも、私自身もみなその光景に驚きました。
ずっと頭の中で描いていた理想の光景が現実になり、提灯と月の明かりに照らされて、素朴な太鼓の音が響く中でその光景を見ていると、まるで夢を見ているような感覚でした。

50年ぶりに復活した盆踊り
高知名物餅投げ
地域の若者が準備した魚つかみコーナー

夏祭りの最後に、用意した花火を地元の消防団や若い方によって打ち上げました。
不慣れな作業に、なかなか点火できずに手間取っていると、
どこからともなく、子どもたちが「が~んばれ~!が~んばれ~!」と大きな声で声援をかけ始めました。その大きな声援に支えられ、夜空に小さな花火が次々と打ちあがる光景は、どんなに大きくて立派な花火よりも、心に響きました。

お祭りが無事終了し、夏祭りに来てくれた地域の方々や盆踊りを踊ってくれたゲストの方々、それまで協力してくれた方々がお互いに手を取り合い、「素晴らしかったね!」「本当に楽しかった!」「お疲れ様でした!」と感謝と喜びの言葉を交わしている光景も本当に感動的でした。

その日の夜は、運営や手伝ってくれた方々、協力してくれた高知県立大学の学生さんたちと一緒に宴会を開き、夜遅くまで語り合いました。予想をはるかに超える来場者数や、盛り上がった盆踊り、カラオケ大会、地域の若い方々が準備してくれた子ども向けのコーナーなど、それぞれの努力と成功を称え合いながら振り返りました。

次の日の朝、会場を片付けに行くと、地域の人が、駐車場が足りなくて近隣に迷惑をかけたから、と駐車場用の新たな土地の確保のため動かれていました。やっぱり、行動が早すぎる!笑

地域の大きな可能性
この夏祭りを通じて、私は地域の力が合わさることで生まれる大きな可能性を強く感じました。最初は自分を含め4人ほどの運営メンバーで始まったものの、その熱量や行動が次第に連鎖し、地域の多くの方が協力してくれました。そして、それぞれの得意分野や行動が掛け合わさり、大きな成果へと繋がっていくのを実感しました。
そしてこれは、今回の夏祭りのためだけではなく、これまで地域にいる方々が地域のために重ねてきた努力があったらからこそ、この夏祭りで一つに結実し、繋がったと感じています。夏祭りが終わったあとも地域の反響は大きく、来られなかった方々も人づてに聞いて、次回は自分たちも協力したい、と言ってくれる若い方達がいました。この夏祭りが、さらに地域の活動が広がっていくための第一歩となると感じています。

四万十町に来てからの変化

ここに来る前、都会では物事が遠く離れた場所で進み、結果や影響を実感することが難しいと感じていました。仕事も、暮らしも、食も、リアリティを実感できる暮らしを求めてやってきた四万十町で3年以上経ち、今は全てが目の前にあると感じます。

地域おこし協力隊という仕事では、目の前にある人と人との関係性、身近な資源や地域の課題に直接触れられ、自分のアイデアがすぐに形になり、地域の課題に挑戦することで、少しずつですが、確かな結果に繋がります。

もちろん、最初からすべてがうまくいったわけではなく、最初の頃は、地域の文化に馴染むのが難しく、思いが伝わらないことも多かったです。それでも、地域の人々と関わり続けていく中で、少しずつ信頼関係が築かれ、絆が深まり、今では、共に大きな達成感を味わうことができています。こんなリアルで生き生きとした暮らしをできているのは、本当に地域の方々のおかげだと思っています。

最近になって気づいた、移住してからの自分の中での大きな変化があります。それは、何かあると、とりあえず地域の方に会いに行って話すようになったことです。最初の頃は机の前で悩むことが多かったのですが、色々な方と話すことで、考えを整理できたり、新しいアイデアが広がったり、あとは、とにかく元気になります!!
そして、何よりもチャンスは人が運んできてくれるということに気づくことができました。

こんな風に変わったのは、四万十町の人が、ありのままの自分を受け入れてくれて、いつも応援してくれたからです。

これからも、地域での活動を通じて、新しい自分や地域の可能性を探し、地域の人と一緒にさらなる広がりを作っていきたいと思っています。